六・二五事件〜トロが無い!!〜

それは6月25日の事であった。
亡き祖母を偲んでの食事会での事件の詳細である。


場所は千葉県、関宿の某和食処。
目玉料理はインドマグロから取れる脂の乗ったトロ。
それを味わうため、伯母は参加人数を確認し、席の予約をしてくれていた。
酒飲みさんが多いため、とりあえずビールや揚げ物類を頼み、しばし歓談は続いた。
お酒が飲めない伯母は、豊富なメニューの中から真剣に吟味していた。
私たちも若鶏、タコ、川海老などの揚げ物や、豚の角煮、枝豆などをつまみつつ、メインを決めかねていた。


程よく場の空気が温まった所で、店員を呼び注文を始めた。
私  「えーと、0.5人前握り。」
店員 「トロが無いんです。」
一同 「・・・はぁっ!!?」
店員 「ですから、トロが付いてるメニューは出来ないんです。」
一同 「トロが無いってどういう事!?」
店員 「あと、ご飯が無いので天丼なども出来ないんです。」
一同 「・・・はい??」
私  「・・・酢飯はあるんですよね?」
店員 「それは大丈夫です。」
一同 「でもトロは無いと・・・。」
店員 「はぁ・・・。申し訳ないです。」
この店のメニュー、7割方『トロ入ってます』のマークが。
一同 「・・・考え直します。」


若いバイトの女の子が去った後で、改めて考えてみる。
トロが売りなのに切らしてるって・・・ありえなくね?
閉店間際ならともかく、日曜の昼よ?
茨城から有料の橋を渡って来たのよ?(費用は従姉妹が負担)
法事でちょこちょこ使ってんのよ?
8人で予約入れといたんだから、相当量のトロが消費されるのは想定の範囲内よね?
「なぜトロが食えんのじゃ!!」そんな怒りで一同ボルテージ上昇。
酒が入っている従姉妹&従兄弟3人はさらにヒートアップ。ついでに私もヒートアップ。


ついにキレたのか、従姉妹1号は責任者の元へ。
会話はこんな調子だったらしい。
従姉妹「トロが食べたくて来たのに、無いってどういう事ですか!?」
責任者「昼の1時じゃね〜、こういう事もあるんですよ。早めに頼んでもらわないと・・・」
従姉妹「じゃあ、何で先に『トロが無くなりそうだから早めにご注文を』と言ってくれなかったの?」
責任者「うちはそんな一流店じゃないですから。」
従姉妹「・・・・・。」
お話にならん、という事で引き上げてきたらしい。
それを聞いて一同怒り爆発。
「なんじゃぁ、そりゃあ!!」
「開き直って謝罪無しかよ!!」
2ちゃんねるに書き込むぞ!!(by私)」
「お詫びに食後のデザートくらいサービスして欲しいわよね。」
「店頭にあった久保田くらい持って来いよ!!(by私)」


しばらくすると、若いバイト店員が申し訳なさそうに入ってきた。
店員 「トロ、一つならあるんですが・・・。」
一同 「本当!!?じゃあ、トロ握りでも・・・」
店員 「いや、あの、一枚しか無いんです。」
一同 「じゃあ、一貫だけ?」
店員 「そうなんです・・・・。」
仕方なく、トロが一貫だけ入っている握りを注文。
他はトロが入っていないメニューを無理矢理選んで注文。
伯母さん、ずっとメニューと真剣に格闘してたのに・・・。がっかりしてました。
私は0.5人前握りのトロを赤身と交換するはめに。
『これはきっとダイエットに励めという、神様仏様の思し召しだ』と自分に言い聞かせ、無理矢理納得。


この騒ぎで食事会はある意味盛り上がり、母は青リンゴサワー1杯でフラフラ。
私も酒飲みさんたちが一揆を起こすのではないかとヒヤヒヤ。
しかしまぁ、「逆にこんなネタそうそう無いよね〜」と笑って終了。
いや、たぶん笑わなけりゃやってられない状況だったのだろう。
これ、接待だったら絶対失敗だもん。
親戚だからいいけど、招いた側の伯母さんのメンツに関わる事だし。
私としては色んな意味で面白いネタだなーと思いました。
店名は実名で書いてやろうかと思いましたが、営業妨害かもしれないので伏せときます。
でも口コミで近所に広まるだろうな〜。
田舎は情報が行き渡るまでに、そう時間はかかりません。
せっかく美味しいお寿司が食べられる所だっただけに残念。


あ、祖母を偲ぶ会なのに、全員トロに熱くなってた・・・。
おばあちゃん、ごめん。私、一応生きてます。